監修:国際医療福祉大学医学部感染症学講座 代表教授
国際医療福祉大学成田病院感染制御部 部長 松本哲哉先生
高齢は最も重要な 重症化リスク因子です1)
高齢者の方は、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いことが分かっています1)。また、新型コロナウイルス感染症により死亡した方の多くは、60歳以上の高齢者です2)。
新型コロナウイルス感染症による年代別累計死亡者数2)
(2023年4月25日までの集計)
都道府県・政令指定都市・中核都市が毎日HPにて発表するデータおよびHER-SYSデータに基づいた患者属性情報(患者別属性情報データベース)、都道府県が毎日発表する検査状況・医療提供状況の断面情報(都道府県別累積公表データベース)、およびメディア情報等から得た集団感染等発生状況情報を用いて集計した。
30歳代と比較して70歳代では47倍、80歳代では71倍と、年齢が上がるほど重症化率※が高くなることが分かっています3)。
30代と比較した重症化リスク3)
※「重症化率」は、新型コロナウイルス感染症と診断された症例(無症状を含む)のうち、集中治療室での治療や人工呼吸器等による治療を行った症例または死亡した症例の割合。
入院が長引けば
新型コロナウイルス感染症でも
寝たきりになることがあります。
高齢者では、新型コロナウイルス感染症の症状以外に、心不全や誤嚥性肺炎などを合併して重症化するケースや、消化器症状により十分な食事を摂れなくなり、脱水症状や栄養障害を起こすこともあります1)。また、一般に入院が長引くと、身体機能や認知機能が低下し、その後寝たきりになってしまう可能性がありますが、こうしたリスクは新型コロナウイルス感染症でも同様です1,4)。
基礎疾患のある方は 引き続き警戒が必要です
基礎疾患のある方は、ない方に比べて重症化リスクが高いことが分かっています1,5)。さらに、これらの重症化リスク因子は、保有する数が増えるほど死亡率が高かったことも報告されています5)。また、新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいだけでなく、基礎疾患自体が悪化することもあります6,7)。特にオミクロン株流行以降は、新型コロナウイルス感染症そのものの症状ではなく、基礎疾患の悪化により亡くなるケースが増加しています6,7)。
基礎疾患別の新型コロナウイルス感染症による死亡率※1, 5)
- ※1:数値(イラスト中の%)は、新型コロナウイルス感染症による死亡率を基礎疾患別に算出したものです。
「基礎疾患による死亡者数」を「基礎疾患をお持ちの方の数」で割って算出したものであり、年齢や他の基礎疾患などの影響については考慮されていません。 - ※2:臓器移植、免疫抑制剤、抗がん剤等を使用している、その他免疫機能低下のおそれがある状態
- ※3:血液中の脂質の値が基準値より高かったり低かったりする状態
新型コロナウイルス感染症発生届ベースのHER-SYSデータ(2021年4月1日から2021年6月30日)を用いて、重症化リスク因子別(解析対象:322,007例)の死亡率を調査した。
新型コロナウイルス感染症は、重症化リスクの有無によって適切な対処法が異なります。
まずはご自身やご家族の重症化リスクを確認しましょう。
重症化リスクがなく軽症で済んでも、後遺症が残る可能性があります。
自分自身や家族や友人などの大切な人を守るためにも、
若い世代の方々も積極的にワクチン接種を検討しましょう。
また、感染した場合でも現在では治療の選択肢が増えてきています。あなたにあった治療法を主治医の先生とご相談ください。
注意が必要なのはどんな人?
今すぐ確認してみましょう
以下の表に当てはまる項目がひとつでもある方は、ない方と比べて新型コロナウイルス感染症の重症化の危険性が高いことがわかっています。
年齢 |
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体型 |
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生活習慣 |
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基礎疾患(持病) | 以下のような持病や既往歴がある
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薬 |
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妊娠 |
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上記に加えて、男性は女性に比べて重症化や死亡のリスクが高いことが報告されています。
COPD:慢性閉塞性肺疾患、HIV:ヒト免疫不全ウイルス
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.1版:9, 2024 より作表
【終了】2024年度の定期接種に関する情報
定期接種の実施時期 | 令和6(2024)年10月1日~令和7(2025)年3月31日 |
対象となる人 |
※心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方 |
・定期接種の対象者以外の方や、定期接種のタイミング以外で接種する場合については、 任意接種としてワクチンの接種を受けることができます。
厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 予防接種課:令和6年度第1回予防接種に関する自治体説明会(令和6年6月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266569.pdf 2025/4/25参照
新型コロナの予防、治療にかかる費用は?
金額は目安です。実際にかかる費用は異なる場合があります。
●ワクチンの任意接種の自己負担額
約15,000円
(参考)2024年度の定期接種における自己負担額は0~7,000円でした
(自治体によって助成のしくみが異なる)8)。●治療薬(経口薬を5日間服用した場合の費用)
自己負担割合1割の場合:約4,960円~9,900円自己負担割合3割の場合:約14,900円~29,700円
注)一般的に処方される経口抗ウイルス薬3種類の薬価より、例として計算した金額。
治療薬は経口抗ウイルス薬のほかに注射薬などもあります。●入院治療9)
月単位の自己負担上限額の計算式:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
加えて食事代が必要となり、また、隔離のために個室を使用する場合の差額ベッド代等の
保険外診療にかかる費用が必要になることもあります。注)70歳以上、年収約370万円~約770万円、自己負担割合3割の方が高額療養費制度を利用した場合の自己負担上限額の計算式を例として記載しています。
自己負担額は年齢、年収によって異なります。
出典
1)
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き 第10.1版
2)
厚生労働省:データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報- より算出、作図 https://covid19.mhlw.go.jp/ 2025/4/25参照
3)
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2023年4月版) https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf 2025/4/25参照
4)
一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会:高齢者における新型コロナウイルス感染症の療養の在り方についての見解と提案 https://www.pc-covid19.jp/files/topics/topics-35-1.pdf 2025/4/25参照
5)
厚生労働省:第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月25日)資料4-3 より作図 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000823697.pdf 2025/4/25参照
6)
厚生労働省:第117回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年2月22日)資料3-8 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001062650.pdf 2025/4/25参照
7)
厚生労働省:第114回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年1月17日)資料3-6 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001039367.pdf 2025/4/25参照
8)
厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 予防接種課:新型コロナウイルスワクチンの接種について 自治体説明会34(令和6年3月15日) https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001226290.pdf 2025/4/25参照
9)
厚生労働省:医療費の一部負担(自己負担)割合について より作成 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000209890.pdf 2025/4/25参照