監修:国際医療福祉大学医学部感染症学講座 代表教授
国際医療福祉大学成田病院感染制御部 部長 松本哲哉先生
新型コロナの後遺症とは
WHO(世界保健機関)では「新型コロナウイルス感染症の発症から3ヵ月経った時点にもみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの」と、定義しています1)。英語では「Long COVID」と呼ばれています。
新型コロナウイルス感染症による 後遺症は、他人事ではありません
新型コロナウイルス感染症と確定診断され入院し、退院した日本人患者を対象とした調査では、診断12ヵ月後においても約30%の方に何らかの後遺症が認められました2)。
診断12ヵ月後に何らかの症状が残っていた方の割合2)
2020年1月~2021年2月に新型コロナウイルスに対するPCRもしくは抗原検査陽性で入院し、退院した18歳以上の患者1,066例(男性:679例、女性:387例/入院中の重症度評価が可能であった985例、無症状:39例、軽症:208例、中等症Ⅰ:412例、中等症Ⅱ:226例、重症:100例)
関東を中心とした北海道、九州を含む全国27施設において、関連する診療科の専門家の意見を統合した症状に対する問診項目を網羅的に作成し、研究対象から自覚症状について回答を得た。
東京都の「コロナ後遺症相談窓口」には、年齢や基礎疾患の有無、新型コロナウイルス感染症の重症度に関わらず、後遺症に関する相談が寄せられています3)。若い世代の方や基礎疾患のない方、軽症だった方も、後遺症と無縁というわけではありません3)。
後遺症が認められた方の割合3)
2021年3月30日~2022年4月30日に新型コロナウイルス感染症と診断され、都立・公社病院のコロナ後遺症相談窓口に寄せられた相談データを解析した(解析対象:2,039件)
後遺症の主な症状は
倦怠感や息苦しさ
以下のようなさまざまな症状が後遺症として現れています4)。主な症状は倦怠感や息苦しさ、筋力低下などがあり、新型コロナウイルス感染症から回復した後に新たに出現する症状と、感染時から持続する症状があります4)。
後遺症の主な症状4)
全身症状
- ■ 疲労感・倦怠感
- ■ 関節痛
- ■ 筋肉痛
- ■ 筋力低下
呼吸器症状
- ■ 息苦しさ
- ■ 咳
- ■ 痰
精神・神経症状
- ■ 抑うつ
- ■ 記憶障害
- ■ 集中力低下
- ■ 睡眠障害
循環器症状
- ■ 胸痛
- ■ 動悸
消化器症状
- ■ 腹痛
- ■ 下痢
その他
- ■ 嗅覚障害
- ■ 味覚障害
- ■ 頭痛
- ■ 脱毛
新型コロナウイルス感染症の後遺症の多くは、時間の経過とともに回復していくことが多いとされています4)。しかし、中には診断から1年経っても症状が残っている方もおり2)、長引く症状により、日常生活や仕事・学業などに支障が出てくることもあります2)。
主な後遺症の頻度(入院患者対象)2)※
※その他、嗅覚・味覚障害や頭痛、関節痛、筋肉痛など、多岐にわたる症状が報告されています。
2020年1月~2021年2月に新型コロナウイルス感染症により入院した18歳以上の患者を対象に、診断後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月に、紙あるいはスマートフォンアプリを用いてアンケートを行った(解析対象:1,066例)。
後遺症の治療は、対症療法が基本
後遺症の原因は現段階では明らかになっておらず、治療法は確立していません。ただし、対症療法(症状に対する治療)を行うことで、症状の緩和が期待できる可能性もあります4)。気になる症状が続く場合には、早めにかりつけ医や地域の医療機関を受診しましょう。
新型コロナウイルス感染症は、重症化リスクの有無によって適切な対処法が異なります。
まずはご自身やご家族の重症化リスクを確認しましょう。
重症化リスクがなく軽症で済んでも、後遺症が残る可能性があります。
自分自身や家族や友人などの大切な人を守るためにも、
若い世代の方々も積極的にワクチン接種を検討しましょう。
また、感染した場合でも現在では治療の選択肢が増えてきています。あなたにあった治療法を主治医の先生とご相談ください。
注意が必要なのはどんな人?
今すぐ確認してみましょう
以下の表に当てはまる項目がひとつでもある方は、ない方と比べて新型コロナウイルス感染症の重症化の危険性が高いことがわかっています。
年齢 |
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体型 |
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生活習慣 |
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基礎疾患(持病) | 以下のような持病や既往歴がある
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薬 |
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妊娠 |
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上記に加えて、男性は女性に比べて重症化や死亡のリスクが高いことが報告されています。
COPD:慢性閉塞性肺疾患、HIV:ヒト免疫不全ウイルス
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.1版:9, 2024 より作表
【終了】2024年度の定期接種に関する情報
定期接種の実施時期 | 令和6(2024)年10月1日~令和7(2025)年3月31日 |
対象となる人 |
※心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方 |
・定期接種の対象者以外の方や、定期接種のタイミング以外で接種する場合については、 任意接種としてワクチンの接種を受けることができます。
厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 予防接種課:令和6年度第1回予防接種に関する自治体説明会(令和6年6月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266569.pdf 2025/4/25参照
出典
1)
WHO:Post COVID-19 condition https://www.who.int/teams/health-care-readiness/post-covid-19-condition 2025/4/25参照
2)
厚生労働省:厚生労働科学特別研究事業 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究.令和3年度 総括研究年度終了報告書 研究代表者 福永興壱 令和4(2022)年4月 より作図 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/145956 2025/4/25参照
3)
東京都:(第88回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和4年5月26日)資料12 https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1021348/1021633.html 2025/4/25参照
4)
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版:13, 2025